申立書の内容が原因で障害年金が不利になるケース

障害年金の申請では、診断書が重要であることはよく知られています。
しかし実際には、「病歴・就労状況等申立書」の内容も審査に大きく影響します。申立書は、これまでの病気や障害の経過、日常生活で困っていること、働くうえでの支障などを本人の言葉で伝える大切な書類です。
一方で、書き方によっては、本来よりも軽く見られてしまったり、診断書との食い違いから信頼性を疑われたりすることがあります。悪気なく書いた表現が、不支給や等級低下につながる可能性もあるため注意が必要です。
この記事では、病歴・就労状況等申立書の内容が原因で障害年金の審査に不利になりやすいケースについて、社労士の視点からわかりやすく解説します。
「自由に書ける書類」だからこそ注意が必要
病歴・就労状況等申立書は、診断書だけでは伝わりにくい生活状況やこれまでの経過を補足するための書類です。
発病から現在までの流れ、通院状況、症状の変化、仕事や家事への影響、日常生活で困っていることなどを記入します。
自由記述が多いため、自分の言葉で状況を伝えられるという利点があります。
その反面、内容があいまいだったり、困りごとが十分に書かれていなかったりすると、審査側に実態が伝わりにくくなります。
障害年金の審査では、「どの病名か」だけでなく、「その障害によって日常生活や就労にどの程度の制限があるか」が見られます。そのため、申立書に生活上の支障が十分に書かれていないと、症状が軽いと受け取られる可能性があります。
「なんとかできている」と書くと軽く見られることがある
不利になりやすい表現の一つが、「なんとかできている」「普通に生活している」といった書き方です。
本人は前向きに伝えたい、弱音を吐きたくないという気持ちで書いていることもあります。
しかし審査では、その表現だけを見ると「日常生活に大きな支障はない」と判断される可能性があります。
たとえば、実際には家族の声かけがないと服薬できない、外出には付き添いが必要、仕事も配慮があって何とか続けているという状況であっても、「生活はできています」「働けています」とだけ書くと、支援や配慮の存在が伝わりません。
大切なのは、「できる」「できない」だけでなく、「どのような支援があればできるのか」「一人ではどこまで難しいのか」を具体的に書くことです。
困りごとを書き切れていないケース
申立書が不利に働くケースとして多いのが、日常生活の困難さを控えめに書きすぎてしまう場合です。
障害年金の申請をする方の中には、自分の困りごとに慣れてしまい、「これくらいは普通」と考えてしまう方がいます。
その結果、本来は書くべき内容を省いてしまうことがあります。
たとえば、次のような内容は審査において重要な情報になります。
食事を自分で準備できない、入浴や着替えに声かけが必要、金銭管理が難しいなどです。
また、人とトラブルになりやすい、職場で特別な配慮を受けているといったことも重要な情報です。
こうした内容を書かないまま申請すると、実際よりも自立度が高いと見られてしまうおそれがあります。
診断書と申立書の内容が食い違っているケース
診断書と申立書の内容が大きく食い違っている場合も注意が必要です。
たとえば、診断書では「日常生活に著しい制限がある」とされているのに、申立書では「特に困っていない」「仕事も問題なくできている」と書かれていると、どちらの内容を重視すべきか判断が難しくなります。
反対に、申立書では非常に重い状況が書かれているのに、診断書では比較的軽い評価になっている場合も、整合性が問題になることがあります。
もちろん、診断書と申立書が一言一句同じである必要はありません。診断書は医師の視点、申立書は本人や家族の視点で書くものだからです。しかし、症状の程度や生活上の支障について大きな矛盾があると、全体の信頼性に影響する可能性があります。
申立書を書くときは、診断書の内容と大きくずれていないかを確認しながら整理することが大切です。
経過が断片的でわかりにくいケース
病歴・就労状況等申立書では、発病から現在までの経過を時系列で記入します。この経過が断片的でわかりにくい場合も、審査上不利になることがあります。
たとえば、「体調が悪くなった」「通院した」「仕事を辞めた」といった事実だけを書いている場合。
なぜ仕事を続けられなくなったのか、どの時期に症状が悪化したのか、治療によってどう変化したのかが伝わりにくくなります。
障害年金では、初診日、障害認定日、現在の状態が重要になります。
そのため、いつから症状が出たのか、どの医療機関を受診したのか、生活や就労にどのような変化があったのかを、できるだけ流れがわかるように書く必要があります。
特に転院が多い方、長期間通院している方、途中で働いた期間がある方は、経過が複雑になりやすいため注意が必要です。
就労している場合は「働けている理由」を書くことが大切
障害年金は、働いているから必ず受給できないという制度ではありません。
しかし、申立書に「働いている」とだけ書くと、就労能力が十分にあると判断される可能性があります。
大切なのは、どのような配慮や制限のもとで働いているのかを具体的に書くことです。
たとえば、短時間勤務である、欠勤や早退が多い、単純作業に限定されている、職場の人がこまめに確認してくれる、障害者雇用で配慮を受けている、対人対応を避けてもらっている、体調不良時に休みやすい環境である、などです。
このような事情を書かずに「勤務している」とだけ記載すると、実際よりも安定して働けているように見えることがあります。
就労している場合ほど、働けている背景を丁寧に説明することが重要です。
家族の支援を書いていないケース
実際には家族の支援によって本人の生活が成り立っている場合があります。
服薬管理、通院の付き添い、金銭管理、食事の準備、掃除、役所の手続き、対人トラブルの対応など、家族が日常的に支えていることは少なくありません。
しかし、申立書にその支援内容が書かれていないと、本人が一人で生活できているように見えてしまいます。
特に精神障害や発達障害、知的障害の場合、周囲の支援があることで何とか生活が維持されているケースがあります。
「本人ができていること」だけでなく、「誰の支援で成り立っているのか」を書くことが大切です。
まとめ:申立書は実態を正しく伝えるための書類
病歴・就労状況等申立書は、障害年金の審査において重要な役割を持つ書類です。
生活や就労の困難さが十分に書かれていない場合、診断書と内容が食い違っている場合、経過がわかりにくい場合などは、本来より不利な判断につながる可能性があります。
申立書を書くときは、症状を大げさに書く必要はありません。
しかし、遠慮して軽く書きすぎることも避ける必要があります。
大切なのは、実際の生活状況を具体的に、時系列に沿って、診断書との整合性にも注意しながら整理することです。
「不利な表現になっていないか不安」「診断書との関係が心配」という場合は、障害年金に詳しい専門家へ相談することも一つの方法です。
申立書を丁寧に整理することで、審査で生活実態が伝わりやすくなります。

まずはお気軽にご相談ください


